半年ぶりに次郎が帰ってきた。

てっきり車にひかれて死んだものと思っていた。

岡田のおばあちゃんでさえ、そう思っていた。

それがひょっこり帰ってきたのだ。

次郎が半年もの間どこに行っていたのか、もちろん僕にもおばあちゃんにも知る由はない。

たが、その半年の間に風貌もすっかり変わってしまうほど成長した次郎の姿を見れば、

それなりの苦労をしてきたことは間違いなかった。

それでも声をかけると、僕の足にすり寄ってきて、

「なんか、くれ。」

の、あの馴れ馴れしい視線を僕に送る。

その時だった。

「あれ・・・」

「おまえ・・その目どうした?」

よく見ると、次郎の右目が完全に潰れている。

「ケンカか・・・・」

「なわばり争いでやられたか・・・」

雄猫が他のなわばりで生きていくのだから、当然のことなのかも知れない。

でも、僕はちょっと複雑な気持ちになって、じっと次郎を見ていた。

それでも次郎は別に気にもしていない様子で「ニャー」とひと鳴きすると、

尻尾をぐるぐると回しながら、おばあちゃんの家の窓から中へと入っていった。

 

次郎が帰ってきたのを誰よりも喜んだのは太郎だった。

太郎は、ずっと次郎の後をついてまわっていた。

次郎が昼寝をしている横で、太郎はトカゲをおいかけ子猫のように玉をとっている。

とても同じ日に同じ母猫から生まれた兄弟とは思えない・・・

それだけ次郎は、成長していた。

 

 

だが、数日もすると、次郎はまたフッといなくなった。

今の自分の居場所へと帰って行ったのだ。

ほんの少しだけ、ここに戻ってきたくなったのかも知れない。

ほんの少しだけ、おばあちゃんの顔を見たくなったのかも知れない。

「心配はいらんよ。片目だろうがなんだろうが、次郎は一人でもちゃんと生きていける。

問題は・・・この甘えちゃんの方たい!!」

おばあちゃんはそう言って太郎を高く抱き上げると、「メッ」と怒った顔をしてみせた。

 

真夏のような入道雲が、もくもくと、梅雨明けしたばかりの高い空に昇っていく。

「もうすっかり夏やねー。」

太郎を抱いたまま、そう言ったおばあちゃんの目には、

たくましく生きてゆく次郎の姿がはっきりと映っているのだ。

 

「また帰ってこいよ。次郎!!」